| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PC2-010 (Poster presentation)
土壌呼吸の主構成要素である従属栄養呼吸は、様々な有機物(落葉や枯死木など)の微生物分解に伴うCO2放出の総和であり、その規定要因として温度や水分条件などの環境因子を用いて推定される場合が多い。また、呼吸速度の評価に関しても通常、基質乾重あたりのCO2フラックスとして表される場合が多く、本来の呼吸主体であると考えられる微生物そのものの量や変動は、そのどちらにも直接的には反映されていない。このことが等環境下(温度・水分条件が同じ)においても従属栄養呼吸が大きくばらつく原因の一つであると考えられ、その実態を解明するためには、CO2放出主体である微生物バイオマスの定量と呼吸速度への組み込みが重要であると考えられる。
基質あたりに含まれている微生物バイオマスの定量を行い、これと高頻度で観測されるCO2フラックスデータを組み合わせることが可能となれば、微生物自身の代謝活性つまり微生物バイオマス相当量あたりに放出される炭素量(=真の従属栄養呼吸速度, mgCO2 h-1 kg-1_microbial biomass)の推定が可能であると考えられる。
本研究では、微生物バイオマス測定法として①直接的測定が可能だが分析に比較的手間がかかる脂肪酸分析法(微生物細胞膜内の総脂質量の測定)と②高頻度分析であるが間接的手法であるSIR法(易分解性炭素の添加による最大代謝活性速度の測定)を用いた。これによって、分解呼吸の制御要因である環境因子と微生物バイオマス因子を分離し、微生物自身が呼吸速度に与える影響をフラックス測定と並行した観測において評価可能であるか議論する。