| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PC2-018 (Poster presentation)
イネ科でケイ酸集積植物として知られるモウソウチクは、近年、管理の行き届いていない森林などに侵入し、生物多様性の低下や物質循環系の変化など様々な影響を及ぼしている。タケは、地下茎伸長 (年平均伸長速度1-2 m) と、タケノコの急速な伸長成長 (約1-2ヶ月で10 m以上) によって栄養繁殖する。この特異的な成長は、母稈からの地下茎を介した養分輸送や節間伸長に起因していると考えられているが、微量元素に着目した研究例は少ない。本研究では、養分の転流と分布および生理的役割の観点から、微量元素とタケの特異的な成長メカニズムとの関係性を明らかにすることを目的とした。
愛知県内のモウソウチク林3サイトから、標準タケ5本を選抜し、月1回の頻度で一年間、葉中元素濃度の季節変化を調査した。また、タケの成熟器官(稈、枝、葉、地下茎、根)および成長器官 (伸長中の地下茎先端部およびタケノコ) を採取し、各器官の元素濃度を測定した。
亜鉛 (Zn) は、タケの全供試器官のうち節部で最も高濃度であり、特に地下茎の節部では、節間部に比べ高い集積性が認められた。タケの節は、そのすぐ上部に細胞分裂組織を有し、節間伸長や枝、稈鞘などの発生を担うことから、Znの節部への局所的集積は、タケの速い伸長成長に貢献している可能性が示唆された。ホウ素 (B) は、成熟葉と伸長中の地下茎やタケノコの細胞分裂の盛んな先端部に局在し、その他の器官ではほぼ検出限界以下であった。また、葉中B濃度は、サイト間・元素間で最も同調的で特徴的な季節的減少と増加を示した。これらの結果は、易移動性Bの成長器官への転流を示唆し、分裂組織における細胞形成の維持に特異的にBが関与している可能性が考えられた。