| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PC2-020 (Poster presentation)
土壌有機炭素は炭素循環の重要な構成要素である。この土壌有機炭素を環境応答性に応じて分画し評価することは今後の環境変動に土壌炭素プールがどう応答するのかを推測することに役立つとされる。分解速度が高い熱帯雨林気候下では、土壌炭素蓄積量が他気候帯に比べ小さいと推測されてきた。しかし難分解性炭素の比率が高いと予想される。本研究では比重分画法を用い湿潤熱帯の低地フタバガキ林の土壌炭素を以下の3つに分画して、土壌炭素蓄積量を総合的に評価した。鉱物との関係を持たない低比重画分fLF、鉱物粒子や団粒と結合した低比重画分mLF、土壌鉱物粒子主体の高比重画分HF、本研究地は、深さ1mまでの土壌に93.2 Mg C /haの炭素を蓄積しており、その87%がHFであった。またδ13Cの値はHFでは表層(0-6cm)と深層(17-49cm)で等しく高い値-27.0‰でありfLFとmLFでは表層ではおおよそ-29.5‰となりHFとの有意な差も確認できた。13C NMRの結果から、表層と下層のHFの有機物組成が、ほぼ等しいこともわかった。層位によらずHFは分解程度や炭素の年代がほぼ等しく、LFとは性質が大きく異なることを示している。これらは他地域では見られない特性であり、低地熱帯の森林土壌におけるHFがLFの分解によって徐々に形成されたものが少なく、ほとんどが溶存有機物由来である可能性を示唆している。低地フタバガキ林の土壌炭素プールでは、溶存有機物由来の安定した画分が相対的に多く、気候変動に対して応答性の低い安定した炭素貯留が形成されている可能性を示唆している。