| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PC2-021 (Poster presentation)

草原生態系における非破壊的な土壌呼吸速度の計測:小型・多点チャンバーを用いた通気法の適用

*墨野倉伸彦, 田波健太(早稲田大学・院・先進理工)吉竹晋平(岐阜大・流圏セ)小泉博(早稲田大・教育)

陸域生態系において大きな割合を占める草原の炭素収支を詳細に評価するためには、正確な土壌呼吸量の推定が重要である。しかし、草原における従来の土壌呼吸速度の測定は地上部植物体を全て刈り取った後に行われていたため、刈り取りによる根呼吸への影響や、刈り取りを行えない生態系での使用制限といった問題点を含んでいる。これを解決するため本研究ではシバ草原における刈り取りを行わない非破壊的な土壌呼吸測定を想定して、その手法の確立を目的とした。

非破壊的に土壌呼吸速度を測定するため、地上部植物体の隙間に設置可能な小型チャンバー(直径:3 cm、高さ:10 cm)を用いて、通気法による土壌呼吸速度の測定を行った。測定値の妥当性を評価するため、①通気させる気体の流速による影響と、②放出される土壌呼吸速度の大小の影響について検証を行った。流速を20~1400 ml min-1の範囲で段階的に変化させながら、土壌呼吸速度の異なる土壌(従来の密閉法によって測定、約0~1800 mgCO2 h-1 m-2)において測定を行った。その結果、本手法は流速の増加に伴って土壌呼吸量を過大評価するが、どのような土壌呼吸速度域においても過大評価の割合は74~330%の範囲で流速ごとに決まっていることが明らかになった。このことから本手法は、密閉法を基準に算出した過大評価率を用いて測定値を補正することで、どのような流速を用いても様々な土壌呼吸速度域において、妥当な測定が可能であると考えられた。本発表では、本手法と比較することで、従来法の問題点を検証する実験についても議論する。


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