| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PC2-023 (Poster presentation)

ボルネオ島北部の熱帯山地林における焼畑放棄後の二次遷移に伴う栄養動態

*西尾尚悟,岡田慶一,藤木庄五郎,北山兼弘(京大・農・森林生態)

これまで熱帯地域の焼畑放棄後二次林は遷移の観点から研究が行われてきたが、景観レベルで植生を理解するためには遷移に及ぼす定常因子の相互作用を明らかにする必要がある。本研究はマレーシア、サバ州、キナバル山とクロッカー山脈の間の山岳地域の焼畑放棄後二次林を対象に、遷移(時間)と標高が植物群落とその生態系過程に及ぼす影響を明らかにした。

聞き取り調査より焼畑後経過年数が明らかとなった25植分に調査区を置き(年数2~55年、標高950~1400m)、種組成、地上部バイオマス、土壌栄養などを調べた。25植分の年数と標高の間に相関はなかった。25植分のDCA解析の結果、第1軸は年数と、第2軸は標高と有意な関係があったことから、植生パターンは焼畑後経過年数と標高によって説明された。植生は、遷移に従い、草本、低木、下部山地亜高木、上部山地亜高木、高木群落の5つの群落に分類され、遷移の初期では植生標高帯が未分化、後期では分化した。土壌化学性および生葉・リター中の栄養のうち、土壌無機態N、土壌全P、土壌pH、生葉N:P比およびリターN:P比と年数の間に有意な関係が見られた。土壌硝酸態Nの現存量は火入れ直後に高く、経過年数と共に減少することから、火入れにより土壌Nが無機化され、その後遷移と共に土壌の酸性化が進むことで硝酸態Nは減少すると解釈された。一方、アンモニア態Nは遷移と共に増加し、土壌全Pは遷移と共に減少した。遷移に従い生葉中のP濃度は低下し、生葉・リター中のN:P比は増加することから、P可給性の低下に対して植生はP利用効率を高める方向に遷移することが示唆された。火入れにより富栄養状態が維持されるために、遷移初期では標高の影響が緩和され植生の標高帯が未分化であり、時間と共に栄養状態が低下するために、遷移後期では標高の影響をより強く受け植生帯が分化したと考えられる。


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