| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PC2-027 (Poster presentation)
大型NEPチャンバーを用いたコナラ林下層植生における炭素動態の解明
*千葉 海,新海 恒,東 祥平(早稲田大・教育),墨野倉 伸彦,友常 満利(早稲田大・院・先進理工),小泉 博(早稲田大・教育)
森林生態系の炭素動態を明らかにする際に、下層植生の炭素動態はしばしば無視されることが多い。また、下層植生の炭素動態を考慮する場合、破壊的で多くの労力を要する手法が用いられてきた。そこで本研究では下層植生における炭素動態を容易に測定できる装置の開発を行うと共に、下層植生の炭素動態を明らかにし森林生態系の炭素動態に与える影響についての議論を行った。
調査は下層植生として高さ約2mのアズマネザサが繁茂している暖温帯コナラ林において行った。軽量型チャンバー(底面積:65×65 cm、高さ:220 cm)とCO2ガス分析器及び光量子束密度計を用いた密閉型の測定装置を作成した。次にその測定装置を用いて2013年8月から12月までの生態系純生産量(NEP)と純生産量(NPP)を推定した。
測定の結果、8月から12月にかけてNPPは常に正の値を取りながら徐々に減少していった。落葉前の8月から11月中旬にかけては林冠にコナラの葉が展葉しているため下層に到達する光は少ないが、光合成の活性が高いためNPPは高い値を示した。一方、落葉後の11月下旬から12月においては下層に到達する光は多くなるが気温の低下によって光合成の活性は低くなっているためにNPPは低い値を示した。またアズマネザサのNPPはコナラ林のNPPの15.8%を占めていた。したがって下層植生は自らの葉の展葉後から冬にかけて常に炭素の固定を行い、森林全体の炭素動態に大きな影響を及ぼしていることが明らかになった。