| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PC2-029 (Poster presentation)
森林の土壌呼吸(Sr)の挙動を正確に把握することは、生態系全体の炭素収支を推定するために極めて重要である。しかし、Srの細かな日変化までをも捉え環境要因との比較を行った例や、同一環境下で異なる樹種の森林のSrを比較した研究は少ない。そこで本研究では近接したアカマツ林・カラマツ林・コナラ林において、Srと環境要因の同時連続測定及び林分間比較を行った。
調査は長野県軽井沢町の3つの冷温帯林で実施した。Srの測定には自動開閉チャンバーによる密閉法を用い、各林分3区画ずつで環境要因との同時測定を行った。連続測定期間は夏季26日間、秋季38日間で行った。
測定の結果、全林分で秋季のSrと地温との間には指数関数的な相関が見られ、決定係数はアカマツが0.89、カラマツが0.88、コナラ林が0.81であった。また、地温に対する感受性はカラマツ林が最も高く、アカマツ林が最も低かった。一方、夏季のSrは地温と相関は認められず、代わりに土壌含水率との間に二次関数的な相関が見られた。決定係数はアカマツ林が0.70、コナラ林が0.54であったが、カラマツ林は0.22とやや低い値を示した。アカマツ林とコナラ林における水分-呼吸曲線の形状から、土壌含水率の最適値はいずれも約18~25%であることが示された。さらに、降雨の有無に応じて夏季のデータを降雨期・湿潤期・乾燥期の3つに分類し、Srと地温の日変化について議論を行った。その結果、湿潤期のアカマツ林ではSrと深さ5cmの地温との間にピークの一致が見られたが、晴天が続き乾燥期に入ると、Srは深さ15cmの地温と同じような日変化を示した。他の2林分でも一部の測定区画では同様の傾向が見られ、Srと地温のピークのずれは土壌含水率によって決定される可能性が示唆された。