| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
シンポジウム S12-4 (Lecture in Symposium/Workshop)
生物多様性が話題にされるとき,必ず持ち出されるのが昆虫類の多様性である。きらきらと光り輝くモルフォチョウやトリバネアゲハ、緑の宝石のようなミドリシジミ類を含む鱗翅目。さまざまな色彩をこれも宝石のようなコガネムシやタマムシを含む鞘翅目。これらきれいな虫たちを見て、私たちに人間は自然の美しさ,豊かさを実感する。その一方で,同じ鱗翅目でも樹皮や枯れ葉に隠れる隠蔽的な色彩や模様を持つシャクガ類やヤガ類、鞘翅目の中にも鳥の糞のようなゾウムシ類や樹皮にまぎれるようなカミキリムシ類。自然界には極端に派手な虫がいる一方で,極端に地味で隠蔽的な虫たちがいるのである。この虫たちの多様な色や模様の進化を駆動したのは、誰あろう、捕食者としての昆虫食の小鳥たちである、というのが私の話題提供である。「そんなの当たり前じゃないか」と、多くの生態学者には言われるかもしれない。だがここで私が話題にしたいのは、鳥はヒトとは異なる「認知システム」を持った生き物であるということである。たとえば色覚にしてもRGBの三色色覚の私たちとは違って、鳥類はUV色覚を持った4色色覚の世界に生きている。視覚以外にも聴覚・味覚・触覚など、鳥は世界認知の仕方が我々とは異なっている(はずである)。テントウムシを見ても鳥はかわいいとも美しいとも思わないだろう。タマムシは鳥にはどう見えているのか。アゲハの黄と黒の模様は鳥にとってはなんなのか。多様な昆虫世界を進化させた駆動力としての鳥の認知に焦点を当てて、シンポでの議論のとっかかりにしたい。