| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
シンポジウム S16-1 (Lecture in Symposium/Workshop)
昨今の我が国の生物多様性保全に関する動きをみると、2010年のCOP10の閉幕時に期待されたほど展開しておらず、一部においては「停滞感」が感じられる。2012年には、新たな生物多様性国家戦略が改定され、国民や企業の生物多様性の認知も一定程度増加しているが、当時掲げた「生物多様性の社会への主流化」と呼べるほどの状態とは言い難い。この停滞感に関して、経済社会分野における生物多様性の理解・関心の不足、我が国全体の保全に対する資源動員力の低下、他の社会的課題と比較した際の生物多様性保全の相対的な重要度の低さなどが指摘されている。本シンポジウムでは、まず各分野の実務家・研究者より、最新の国内の生物多様性保全に関する現状と課題、さらに直近の政策・事業の動向を紹介する。その上で、中長期のスケールにおける我が国の社会構造・経済活動の将来的な予測を踏まえて、次世代の生物多様性保全に関する政策・事業・研究のあり方に関して議論したい。本発表では、本シンポジウムの趣旨説明として、まずこれまでの我が国の自然環境行政の変遷と現状について、生物多様性の保全に関わる人的、経済的リソース、法制度及び社会的要請等を整理する。さらに、日本の社会構造・地域環境に大きく関わるグローバル資本主義経済や人口動態が生物多様性に及ぼす影響を概観する。その上で、経済社会下における生物多様性保全の展開方策を議論するための論点として、社会経済のメリットを捉えた政策事業の展開、社会の多様な主体が共有できる情報基盤の構築、多様な主体内部における人材育成と主体間連携を提示し、これらの取組を推進する政策や研究に必要な視点を明らかにしたい。