| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


シンポジウム S17-2 (Lecture in Symposium/Workshop)

生物共生型農法の費用対効果

*柘植隆宏(甲南大・経済),赤沼宏美,遠藤千尋,大脇淳,金子洋平,小林頼太(新潟大・朱鷺自然再生学研究セ),田中里奈,寺井亜希,中田誠(新潟大・農),中村慧((株) インテージ),西川潮(金沢大・環日セ)

水田の生物多様性を維持または回復するために、生物共生型農法に対する関心が高まっているが、生物共生型農法は慣行農法よりも労力や時間がかかったり、収量減少のリスクが高かったりするため、農業者の負担が大きい。生物共生型農法の拡大のためには、農業者の負担をできるだけ小さくすることが重要である。

生物共生型農法にはさまざまな取り組みが存在するが、その生物多様性への効果や実施の負担は必ずしも同じではないと考えられる。したがって、生物共生型農法の普及を目指すうえでは、費用対効果の観点から各農法を評価し、より効率的な農法を推進することが有益であると考えられる。すなわち、各農法による生物多様性への効果と実施の負担を比較し、同じ効果をより小さな負担で実現できる農法を推進することによって、より効率的な取り組みが可能になると考えられる。

本研究では、各農法の生物多様性への効果を野外実験により分析する(生態学的分析)とともに、各農法を実施することの負担を農家への意識調査と経済分析により明らかにし(経済学的分析)、これら生態学的分析と経済学的分析を統合して、生物共生型農法の費用対効果を分析した。分析の結果、農薬や化学肥料を使用しない無無栽培は取り組みの負担は大きいものの、様々な生物多様性指標を高めるうえで費用対効果が高いことが明らかとなった。また、それぞれの農法に対して異なる生物が反応するため、農地の生物多様性を高めるためには、生物共生型農法の多様性を高めるべきであることが示された。


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