| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
企画集会 T22-1 (Lecture in Symposium/Workshop)
本講演では企画集会の趣旨説明と日本の植生帯の移行域に特有の森林について事例報告を行う.
日本の成帯的森林であるヤブツバキクラス,ブナクラス,コケモモ-トウヒクラスの境界には特徴的な針葉樹林がみられる(本多 1900).ヤブツバキクラス域上限~ブナクラス域下限ではモミ・ツガ林であり,シキミ-モミ群集Illicio-Abietetum firmae Suz.-Tok. 1961,モミ-イヌブナ群集Abieti firmae-Fagetum japonicae Takeda et Ikuta 1986,コカンスゲ-ツガ群集Carici-Tsugetum sieboldii Suz.-Tok. 1952,ツガ群団Tsugion sieboldii Suz.-Tok. 1953等が報告されている.中間温帯(間帯)はモミ・ツガ林とイヌブナ,クリ等のブナクラス下部の夏緑広葉樹林の生育域を指す(鈴時 1961,1966).
一方,ブナクラス域上限~コケモモ-トウヒクラス域下限では同属のウラジロモミ・コメツガ林が特徴的で,コメツガ群集Tsugetum diversifoliae Kurita et Usui 1958,シノブカグマ-コメツガ群集Arachniodo muticae-Tsugetum diversifoliae Maeda et Shimazaki 1951,カニコウモリ-ウラジロモミ群集Cacario-Abietetum homolepidis Miyawaki, Hamada et Sugawara 1967等の植生単位が記載されてきた.これらの群集は,現在はマイヅルソウ-コメツガ群集Maianthemo-Tsugetum diversifoliae Suz.-Tok. 1949に統合され,コケモモートウヒクラスに所属されたが(村上 1994),その生態,統合の経緯や根拠について事例として報告する.