| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) A2-27 (Oral presentation)

持続的な地下水の利活用に向けた地下水の起源推定と環境教育の場の創出―北海道札幌市を事例に―

*松原一平(北大地球環境), 根岸淳二郎(北大地球環境), 岩井尚人((一社)プロジェクトデザインセンター), 宇井雅彦(北海道コカ・コーラボトリング(株))

地下水は陸域に普遍的に存在し、水源や野生生物の生息環境因子として重要な機能を果たす.一方で、人為起源物質による水質汚染や汲み上げの増加による地盤沈下等の問題が顕在化しており、涵養起源の推定は地下水の適切な管理保全において重要である.他方、持続的かつ有効に地下水資源を利活用するために、その地域の人々の理解の促進を図る事が重要である.本研究は、北海道札幌市豊平川・厚別川流域の積雪、降水(降雨と降雪)、河川水及び地下水(汲み上げと湧水)を対象に起源推定を行うと共に、得られた知見を地域の人々に還元する環境教育活動を産学官民機関が連携し企画・実施した.両流域45キロ圏内で2014年4-12月にかけて複数タイプの水試料(積雪、降水、河川水及び地下水)を不定期で採取した.また、高校生を対象に水安定同位体比分析や地下水管理保全の重要性を体系的に理解できるような活動を設計した.豊平川一部と厚別川流域の地下水は水安定同位体比が有意に異なり、各流域における降水の同位体高度効果による影響であると考えられた.豊平川における冬季のサケ産卵床分布に大きな影響を及ぼす湧水(扇状地末端部)は、低地扇状地上への降水を起源とする可能性が高かった.したがって、各流域の地下水資源とその生態学的諸機能を維持するためには、流域ごとの管理保全が必要であると考えられた.環境教育活動は最新の科学的知見に基づいた横断的かつ体験型の内容で2014年11月1日に実施した.参加者からは水安定同位体についてさらに主体的に理解を深めたいといった意見が得られ、水資源利用に係わる理解の促進における本教育活動の有効性が確認された.


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