| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(口頭発表) B2-27 (Oral presentation)
外来種の定着機構を考える際、複数の外来種が同所的に生息することも多いことを踏まえると、外来種間の関係も理解する必要がある。外来種間の関係については、互いに無関係に定着、外来種が別の外来種の定着を助長(侵入溶融)、外来種が別の外来種を排除して定着、の3つに大別される。北海道石狩川水系千歳川では、1920年代から外来サケ科魚類ニジマスが定着していた。しかし、現在生息する主な外来サケ科魚類は1980年代に侵入したブラウントラウトで、ニジマスの分布は、移動障壁によりブラウントラウトが侵入できない水域に限られる。先行研究では、ニジマスとブラウントラウトはニッチ重複が大きく、両種が同所的な場合は、種間競争が強く生じることが示されている。したがって、千歳川のブラウントラウトはニジマスを競争排除して定着したと考えられている。そこで、両種間の競争関係を明らかにするためにエンクロージャーを用いた野外操作実験を行った。
実験は2014年8月に千歳川支流ママチ川で行った。両種が混成する区と単独でいる区を設け、それぞれに低密度区と高密度区を設けた。そして、エンクロージャーで15日間飼育し、各個体の成長率で競争の影響を評価した。なお、流速の成長率への影響も考慮した。
ブラウントラウトの成長率には、ニジマスの存在、密度、流速のいずれも影響しなかった。一方、ニジマスは高密度区の方が成長率が低かった。また、流速が速いと、単独区よりも混成区の方が成長率が低く、逆に、流速が遅いと混成区の方が成長率が高かった。以上より、ブラウントラウトによるニジマスの競争排除は、特に流速が速い環境下で起きやすいと考えられた。一方、流速が遅いと、ブラウントラウトがニジマスの定着を助長することもあるのかもしれない。