| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(口頭発表) B2-28 (Oral presentation)
絶滅危惧植物や保全すべき重要な植物群集の中には,外来生物(植物や動物,寄生生物)による被害が大きなものもある.種の生物学的な特性にもとづく外来種のリスク評価は研究途上であるが,社会においては研究の進展を待たず,今すぐ評価することも必要である.ここではこのような要求にこたえるため,専門家によるアンケートをもとに,在来生物のハビタットにおける対策の重要性と,外来生物種の重要性の評価を試みた.
ただしアンケートで得られた重要度評価値は単純に平均できない.(1)絶対的な尺度のないアンケートでは評価者によって全体の重要度レベルが異なり, A,B,Cの3段階の評価においてはAとBのみで回答する傾向のある評価者と,BとCのみで回答する傾向のある評価者が現れる.(2)北海道から沖縄までの全国の全ての現場を知っている専門家は存在しないため,評価者xによる北海道と関東の評価と,評価者yによる関東と沖縄の評価を合成し,北海道から沖縄までの統一的な評価を行う必要がある.そこで回答者ごとの1対1の比較(どちらが相対的に重要か)を元のデータとして全体の重要度を再構成した.侵入先のハビタットの重要度にも違いがあり「路傍草地に優占する外来種Tの重要度」と「極相林に散在する外来種Sの重要度」を直接比較することは困難であるため,主要なハビタットごとに,そこでの外来種の重要度を比較し,ハビタットごとの対策の重要度は別途比較した.
対策を取るべきハビタットとしては,小笠原諸島などの海洋島の植生,水生植物群集,河原・崩壊地の貧栄養砂礫地の順に重要であり,里山の二次草原と貧栄養湿地,砂浜海岸が続くとの結果になり,それぞれのハビタットでの重要な外来生物のランキングが得られた.