| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(口頭発表) B2-31 (Oral presentation)
カワヒバリガイは1990年代初頭に国内に侵入・定着が報告され、関東地方では2005年に群馬県の大塩湖と茨城県の霞ヶ浦で生息が確認された。演者らは2006年と2012年の比較調査から、霞ヶ浦においてカワヒバリガイの分布拡大が進行していること、遅くとも2018年までには湖岸全域に定着する可能性が高いことなどを明らかにしてきた(伊藤・瀧本 2013)。しかし、これらの結果は2006年と2012年のデータだけの比較を基礎としており、この間の密度の経年変化がどのような傾向を持つのかは明らかではない。カワヒバリガイの密度変動の状況を明らかにすることを目的に、2009-2014年に本種の浮遊幼生の密度を霞ヶ浦湖岸と霞ヶ浦から取水している貯水池の二カ所で調べた。その結果、霞ヶ浦では2009年と2011年は1m3当たりほぼ50個体以下という低いレベルだったが、2012年に最大で2000個体以上の値を示し、その後の2013, 2014年は最大値が200個体以上のレベルで推移している。それに対し、霞ヶ浦から取水している貯水池では2011年まで低い密度だったが、2012年から増加する傾向が続き、2014年には最大で1m3当たり2万個体を越える幼生が確認された。この傾向は2013-2014年の新規加入群の密度変動とも一致した。霞ヶ浦と周辺の貯水施設における幼生の密度は共に2011年を境に増加する傾向を示しており、今後の動向に引き続き注意を払う必要がある。特に、霞ヶ浦から取水する貯水池で見られた幼生密度の急激な増加は、この貯水池が周辺地域にカワヒバリガイの幼生を供給する起点となった可能性を示している。