| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(口頭発表) B2-33 (Oral presentation)
外来生物が移入地に定着し分布を拡大するためには、移入地の環境に適応しなければならない。移入地の環境は原産地とは異なるため、適応の過程で特性が変化することがある。演者らは、北米原産の外来昆虫であるブタクサハムシにおける生殖休眠誘導に関する光周性が、日本に移入後に変化したこと、全国数地点で採集した系統について緯度に沿った地理的勾配があることを報告した(Tanaka et al. 2015)。この結果が全国的な傾向であるか実証するためには、さらに多くの個体群を調べる必要がある。また、本虫の光周性の地理的変異には、緯度だけでなく、標高や寄主植物の違いも影響する可能性がある。そこで、全国18地点で採集した系統における光周性実験の結果を用いて、日長13時間における休眠率および臨界日長に対する3要因(緯度、標高、寄主植物)の効果を重回帰分析によって解析した。その結果、休眠率に対しては3つの要因が、臨界日長に対しては緯度と寄主植物が有意な効果を与え、緯度が高いほど、標高が高いほど、またオオブタクサよりブタクサの方が休眠率が高く、臨界日長が長い傾向があった。これらの結果は、本虫が分布拡大後に定着した場所の気候および寄主植物のフェノロジーに適応したこと、さらにそれが比較的短期間に生じたことを示している。しかし、北海道(苫小牧)の系統は、全国的な傾向から大きくはずれた。この要因として、苫小牧では移入後の経過年数が他の地域より短く、そのため同地の環境に十分適応していないこと、あるいは他の個体群とは異なる適応機構が関与することが考えられる。