| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(口頭発表) D1-13 (Oral presentation)
非皆伐施業は、木材生産と生物多様性の保全を両立させる観点から注目されている。この中で、択伐施業は北海道の天然生林においても広く行われてきたが、既存の研究は、木材生産の持続可能性に着目したものが大半であり、生物多様性保全の面から施業を評価することが必要である。本研究ではこれまで集約的な管理によって立木の現存量(蓄積)がある程度保たれた択伐施業林分を対象として、伐採が、森林の構造、とりわけ森林に生息する鳥類種の採餌や営巣に重要と考えられる構造要素の量に与える影響を明らかにすることを目的とした。北海道大学中川研究林内の、照査法による単木伐採が行われている天然生針広混交林で調査を行った。面積67.5haの試験地全域(5.4haの無施業区を含む)において1970年代以降、約10年間隔で上層生立木の胸高直径及び生存の状況が記録されている。このデータに加えて、施業区、無施業区それぞれに複数の詳細調査プロットを設置し、下層木・下層植生、上層木に付随する構造要素(樹洞、幹の着生植物)について調査した。施業林分では、上層生立木の現存量は維持されていたが、サイズ構成は変化しており、大径木の減少傾向が見られた。また、施業林分では林冠高のばらつきが大きく、階層構造がより明瞭であった。一方、枯死木の総供給量は約15%少なかった。施業林分では、さらに、枝落ちなどに由来する樹洞を持つ立木(-30%)や幹に着生するコケの総量(-40%)が少なく、一方で、ササの平均群落高(+10%)が高かった。以上のように、集約的に行われた択伐施業は、上層生立木に関する林分構造をある程度維持していた一方で、枯死木などの構造要素の変化を招いたことが明らかになった。最後に、詳細調査プロットの一部で行った音声記録による鳥類調査の結果をもとに、実際の鳥類種の出現傾向を示す。