| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(口頭発表) D1-16 (Oral presentation)
熱帯域における森林伐採の半分以上が不法伐採による。本講演では、不法伐採がはびこる状況を理解するため、進化ゲーム理論を展開した。仮定:[1] 複数の林業者が森林で作業し、森林の多様性保全に役立つ作業をする(協力C)か、材木を伐採して売り払う(非協力D)か、を選ぶ。深い森での作業のため、何れを行っているかは他人には知られない。[2]林業者の全員がお金を出し合えば監視者を雇用でき、監視者は林業者をチェックし、伐採を行なう場合に罰金を課す。伐採を行う林業者は、監視者に賄賂を払って見逃してもらうことがありうる。監視者には、賄賂を拒否する良心的タイプと、賄賂を受け取る汚職タイプとがある。[3] 林業者には協力的/非協力的と、監視者にお金を出すか/出さないかの組み合わせがあり、最終的に、監視者は雇うが森林伐採する、監視者は雇わず森林伐採する、他の林業者が監視者を雇うなら自らは協力的だが、そうでないと自ら森林伐採する、の3タイプが残る。[4] 林業者3タイプと監視者2タイプについて、それらの割合がレプリケータ力学に従う。モデルの挙動:平衡状態が連続的に並び林業者が全員協力する「協力的平衡群」と、平衡状態が並び林業者全員が森林伐採する「非協力的平衡群」、の2つがある。系は双安定で、初期値によって100%の協力か100%の非協力の何れかに収束する。小さい確率で別のタイプにランダムに変化する突然変異や、監視者のタイプについての情報の効果も調べた。結論: 違法伐採がほとんど生じない国や地域と非常にはびこる地域があり、互いの様子を理解することが困難である。監視者に対する教育を行なうことや、監視者の信頼性についての情報が、違法伐採を抑えるために有効である。