| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(口頭発表) D1-17 (Oral presentation)
急速な熱帯林減少を受けて、REDD+(森林減少・劣化からの炭素排出の削減)などの森林保全メカニズムの構築が進んでいる。REDD+が森林保全効果を発揮するのは、それが森林減少の駆動因を除去・低減する方向にうまく機能した時のみである。しかし、森林減少の駆動因は時空間変動が大きく複雑なためよく分かっていない。そこで、過去30年間の1)東南アジア8ヶ国と2)熱帯53ヶ国の森林減少の駆動因を解析し、3) 2000-10年の53ヶ国における森林減少の4段階間(減少前、減少前期、減少後期、回復期)で社会経済状況を比較した。
1980年代、東南アジア8ヶ国の森林率は、熱帯低地林(生産性が高くアクセスし易い)の潜在面積が広く、人口の多い国ほど低かった。そして、人口が多く、都市人口比が高く、社会的に安定し、農業にお金をかけられる高開発国ほど森林が減少した。1990年代以降は、逆にそのような国ほど森林が回復した。一方、農林産品の生産・輸出が多い国は、年代に関わらず一貫して森林が減少した。熱帯53ヶ国も東南アジア8ヶ国と似た傾向を示した。このように森林減少の駆動因は、多岐にわたる(人口・経済・貿易・地理・農業)ものの異なる空間スケール間で似ており、また国際化が進んだ1990年頃を境に大きく変化していた。
Forest transition仮説(所得や人口密度の上昇に伴い森林が減少から増加に遷移)に反し、森林変化の4段階間で一人当たりGDPや人口密度に一貫した傾向は見られなかった。森林の減少前→回復期の国にかけて、木材輸出量は一貫して減少し、人間開発指数や農業集約化度、サービス業の対GDP比は増加した。熱帯林回復には、貿易・産業構造・農業生産性など、所得や人口以外の様々な要因も重要であることが分かった。