| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) D1-18 (Oral presentation)

タイ熱帯林における鳥類の自動音声認識による多様性調査法の開発

*丸山晃央(京大院農), 藤田素子(京大東南ア研), 奥乃博(早大理工学術院), 糸山克寿(京大院情報), Dome Pratumthong(タイ国立科学博物館), Taksin Artchawacom(サケラート環境研究ステーション), 神崎護(京大院農)

近年、人の音声認識に用いられる機械学習等の手法が鳥類のさえずりによる種識別にも応用されており、録音データの自動認識の発展が期待される。本研究の目的は、1)長期録音データからのさえずりの自動検出法と、2)機械学習による種の識別法の開発である。

調査はタイのサケラート環境研究所で行い、39種の鳥類のさえずりの音声と長期録音データを取得した。識別にはサポートベクターマシン(SVM)を使い、音声特徴量としてメル周波数ケプストラム係数(MFCC)等を計算し、音声以外の特徴量として生息地、録音時間帯をカテゴリカルな変数として与えた。

さえずりの検出:長期録音データから90秒の音声データを124セット、任意に取り出した。音量変化量を基準にさえずりの始点を求め、始点から1秒間の音声を切り出した。その音声特徴量を計算し1クラスSVMで鳥の音声か否かを識別した。鳥の音声と識別されたサンプルの正答率は71%であり、長期録音データから鳥の音声のみを効率よく検出できる可能性が示唆された。

種識別:さえずりの音声サンプルを学習データとテストデータに分け、SVMで学習後、テストデータを識別させた。さえずりの種内変異の大きい種では識別率が低下するため、クラスター分析でさえずりを複数の種内タイプに分類して識別を行った。識別結果は55~99%で平均78%であった。機械的識別が種の識別に有効である可能性が示唆された。また、種内タイプ分けによって6種で識別率が平均23%向上した。さらに、音声以外の特徴量を加えることで生息地と出現時間帯に特異性がある種の識別率がそれぞれ平均12%、19%向上した。


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