| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) D1-23 (Oral presentation)

汽水域の河床間隙に生息する魚類イドミミズハゼの生息場の河床変動および塩分変動特性

乾隆帝,赤松良久(山口大院理工),新谷哲也(首都大院都市環境),小山彰彦(九大院生資)

汽水域に生息するハゼ類は,種によって生息環境が少しずつ異なるため,汽水域におけるハゼ類の多様性保全するには,ハビタットの多様性を保全することが必須である.そのためには、汽水域に存在する様々なハビタットの成立,そして維持メカニズムを知ることが必須となる.本研究では,イドミミズハゼのハビタットに着目した.イドミミズハゼは,汽水域の礫床間隙や伏流水に生息する魚類であり,眼は退化して小さく,生時の体色は橙色やピンク色という特徴的な形態を持っている.本種は,日本各地で生息数の減少が危惧されているため,本種の生息環境を解明し,保全することは急務である.本研究では,佐波川水系において,採集調査によってイドミミズハゼの生息環境を明らかにし,さらに,本種の分布域が集中する場所の河床変動特性と,塩分変動特性を明らかにすることを試みた.採集調査の結果,本種は,佐波川感潮域の中では粒度が大きく,塩分は中程度で,地盤高は比較的低く,大潮や中潮の干潮時に干出する程度であり,また分布の中心は,汽水域内の中流からやや上流に位置することが示された.河床変動計算の結果,本種の分布の中心は,出水後に大幅に粗粒化する領域と,大幅に細粒化する領域の境界付近と重複することが示された.塩分変動の計算の結果,本種の分布の中心は,淡水に近い低塩分水に長時間曝されるような環境ではなく,長時間にわたって塩分の影響下にある環境であることが示された.これらの結果から,出水時に粗粒化される領域と,細粒化される領域の境界付近が,イドミミズハゼにとって好適な礫床環境が形成されやすい場所であり,さらに,それらの環境の中でも,長時間にわたって塩分の影響をうける環境が,イドミミズハゼにとって重要な生息地であることが明らかになった.


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