| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(口頭発表) D2-28 (Oral presentation)
都市化に伴う生息地の分断化により、急速に両生類個体群が縮小している。都市緑地公園は両生類にとって重要な生息地であるが、地域個体群の長期的な保全を実現するには、個体群の遺伝的多様性や他の個体群からの遺伝子流動の維持が欠かせない。遺伝的多様性は、主にソースとなる生息地から各個体群への個体の移入により維持される。また、個体群間の移動分散による遺伝子流動は、移動能力による制限を受けるため、移動可能な閾値距離の把握が必要である。本研究では、北海道札幌市をケーススタディとし、緑地公園における1)両生類個体群の遺伝的多様性に大規模生息地が与える影響、2)両生類の移動分散が起こり得る空間スケールを、エゾアカガエル(Rana Pirica)を対象に把握した。
緑地公園12地点における279個の胚を用いて、マイクロサテライトDNA解析を行った。1)GLM解析の結果、ヘテロ接合度は河川からの距離と負の相関、公園の造成分類(残存森林)と正の相関が示された。また、アリル多様度は大面積森林からの距離と正の相関、公園の造成分類(残存森林)と正の相関が示された。なお、両応答変数において公園内の生息地面積との相関は見られなかった。この結果から、河川はソース生息地として都市個体群の遺伝的多様性を維持するが、大面積森林はその機能が弱いこと、また、新規造成地の個体群は残存森林の個体群に比べて変異が少ないために比較的絶滅リスクが高いことが示唆された。2) 9段階の空間スケールにおいて個体群間の遺伝的分化Fstと地理的距離との相関をマンテル検定によって評価した結果、正の相関が見られたのは0-6kmの範囲であった。よって、約6km圏内では個体の移動分散による遺伝子流動が生じることが示唆された。これらの結果を元に、都市緑地公園の管理について議論する。