| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) D2-29 (Oral presentation)

砂礫性昆虫によって維持される森と川のつながり~礫河原への植生侵入の影響に注目して~

*植村郁彦,根岸淳二郎(北大院・環境),照井慧,中村太士(北大院・農)

隣接した生態系間の餌資源供給は、各系の構造および機能維持のために重要である。扇状地河川の礫河原は、自生性の餌資源に乏しい環境である。礫河原に生息するオサムシ科やクモ目(以後砂礫性昆虫)が、河川からの水生昆虫を餌資源とし、自身が河畔林に生息する哺乳類や鳥類の餌資源となることで、扇状地河川における川から森への餌資源供給が維持されている。近年、ダムの流量調節による洪水頻度低下により、礫河原への植生侵入が生じている。本研究は、生態系間の餌資源供給に対する礫河原への植生侵入の影響を解明することを目的とし、植生侵入により砂礫性昆虫は水域餌資源利用度を低下させるという仮説を検証した。

2014年6、8月において、北海道十勝川支流札内川および 戸蔦別川の計18サイトで、水生・陸生生物採取、およびUAVによる空中写真撮影を行った。水域餌資源量の指標として藻類現存量を定量化した。空中写真のGIS解析から、植生侵入の指標として、砂礫性昆虫の採取地点周囲の植生面積、植生エッジ距離を算出した。各生物試料の炭素安定同位体比から、混合モデルを用いてオサムシ科、クモ目の水域餌資源利用度を算出した。各分類群の水域餌資源利用度を目的変数、藻類現存量、植生面積および植生エッジ距離を説明変数、河川をランダム効果としてGLMMを作成し、AICが最少となるベストモデルを求めた。

両分類群ともにベストモデルにはすべての変数が残り、水域餌資源利用度との関係は藻類現存量および植生面積が正、植生エッジ距離が負となった。また、水域餌資源利用度に対しての影響度は、植生エッジ距離がもっとも高く、藻類現存量が続いた。この結果から、水域餌資源量を一定とした場合、礫河原への植生侵入は、水域から陸域への砂礫性昆虫を介した物質移入を減少させることが示唆された。


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