| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) D2-30 (Oral presentation)

陸域への資源パルスの時空間変異:河川羽化昆虫量および群集構造における河川・生息場タイプの影響

*根岸淳二郎(北大院地球環境),植村郁彦(北大院地球環境),渡辺のぞみ(北大院地球環境),照井慧(北大院農),中村太士(北大院農)

河川からの羽化水生昆虫は河畔域の消費者へ餌資源を供給することで重要な機能を果たす.羽化昆虫の群集構造やタイミングの変異は、河床材料等の生息場の物理的な特徴や水温から強く影響を受ける.したがって、それらの特性が異なる河川タイプ間、あるいは河川内の生息場タイプ間、等の複数空間スケールで、時空間的変異に富む資源供給パルスの存在が予測される.本研究は、北海道東部の十勝川流域の札内川支流を対象として、羽化昆虫量・群集構造の時空間変異を明らかにした.河川タイプとして、低地から発する湧水河川と山地からの通常の河川を各2本ずつ(15キロ圏内に計4本)設定した.各河川複数地点で代表的な3種の生息場タイプを設定し、各所において羽化昆虫サンプルを異なる季節に取得した.水安定同位体比の分析結果から、湧水河川は、低地の降水や山地降水の伏流水、一方で、山地に発する通常河川は山地の降水、をそれぞれ起源とすることが示唆された.湧水河川は異なる水起源を有したが、どちらも、通常河川と比べて水温および流量変動が著しく小さかった.羽化昆虫の分類群数は河川タイプ間では大きく異ならなかったが、各タイプ固有の分類群が複数確認された.また、同種であっても羽化タイミングが異なる場合もあり、さらに、羽化昆虫量の季節変化パターンは河川タイプ間で異なった.羽化の季節パターンは生息場タイプ間でも異なったが、その程度は通常河川においてより明瞭であった.さらに、富栄養化が進行する箇所では、羽化量の変動に変異が生じていた。以上より、人為影響下にある複数の河川タイプから形成される河川ネットワークでは、そのタイプ間あるいは河川内生息場構造の差異の程度に応じて、陸域への資源供給パルスに複雑な時空間変異を呈することが示唆された.


日本生態学会