| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(口頭発表) D2-32 (Oral presentation)
生息適地モデルは、保全優先地域の選定など保全活動で重要な役割を担ってきた。これらのモデルには、データ収集の簡便さなどから対象種の分布情報にもとづいたものが多い。また、保全活動に利用する場合、他地域で作成したモデルを、それ以外の場所に転用する例も少なくない。
この生息適地モデルの転用可能性を高める方策として、繁殖成功など適応度成分にもとづいた評価が有効と考えられる。分布による評価では、分散速度の小さい生物や長寿の生物が、質の低下した生息パッチに分布し続ける「絶滅の負債」や、優位個体が質の高いパッチを占有し劣位個体を低質パッチに追いやる「理想占有分布」が生じている場合、誤った評価を行うことが予想される。一方、繁殖成功は、その時点で個体のいるパッチの質を反映している可能性が高いため、その推定では誤評価の程度が小さくなると予想される。しかし、繁殖成功の調査には、分布調査よりも多くの労力が必要であり、特定地域の情報しか使えない可能性が高い。この場合、分布による誤評価の傾向を景観情報などから推定できれば、より多くの地域への転用可能性が高まると考えられる。
本研究では、比較的寿命が長く分散速度も小さい、なわばり性の捕食者サシバを対象とし、主要生息地である里山景観の分断化が進んだ地域とそうでない地域など複数地域での生息地評価を、分布と繁殖成功それぞれにもとづいて行い、分布による誤評価の傾向を景観構造から推定可能か調べた。その結果を報告する。