| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) E2-27 (Oral presentation)

モデル選択をしてからパラメーター推定すると:推定精度への影響

粕谷英一(九大・理・生物)

現在のデータ解析では、モデル選択の基準となる量によりモデルを選び、選ばれたモデルを使って要因や説明変数の効果の強さのようなパラメーターを推定するという手順は普通である。モデル選択でよく使われる規準量として、予測の最適化に基づくAICやモデルを選ぶ上での一致性を持つBICがある。これらの規準量に基づくモデルの選択はそれぞれ提案された基準にかなったモデルを選ぶものであるが、モデルの選択とパラメーター推定や検定のような他の方法と組み合わせて使うことが適切かどうかは確立されていない。「モデルの選択+パラメーター推定」についても適切か明らかにされぬままに広く使われている。

そこで、推定誤差のよく使われる指標である平均二乗誤差を用いて、「モデルの選択+パラメーター推定」によるパラメーター推定の良さを検討した。以下の点が明らかになった。「モデルの選択+パラメーター推定」では、単純な最尤推定よりも、平均二乗誤差が大きくなることがある。また、「モデルの選択+パラメーター推定」での推定誤差の大きさはパラメーターの真の値がわからないとわからない。これらの結果は、「モデルの選択+パラメーター推定」のような、モデルの選択と他の方法とを組み合わせた使用は、普通には想定されていないマイナスの影響をもたらすことがあり、注意を要することを物語っている。


日本生態学会