| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(口頭発表) E2-29 (Oral presentation)
共通の被食者を利用するギルドに属する一方の捕食者(以下,雑食者)が他方の捕食者(以下,消費者)を食うギルド内捕食は,群集の重要なモジュールの一つである。ギルド内捕食系では,しばしば一方の捕食者が絶滅し,2種の内のどちらかが絶滅する双安定性も現れることが知られている。2種の捕食者が共存するための必要条件は,消費者が雑食者よりも効率よく共有被食者を利用できることである。Lotka-Volterra型の古典的なモデルでは,被食者の生産性が低いときは消費者,生産性が高いときは雑食者が勝ち残り,2種が共存できるのは生産性が中間的であるときのみであることが知られている。しかし,自然界や実験室では,生産性が高くても消費者が絶滅せず,理論研究と実証研究の食い違いは大きな謎となっている,
本研究では,雑食者の消費者に対する機能の反応がIII型であるモデルを解析し,いくつかの機構で生産性が高くなっても消費者の絶滅が避けられることを明らかにする。III型の機能の反応では,餌密度が低くなるとその低下を上回る速度で捕食率が下がるため,被食者と雑食者の平衡状態に消費者が侵入可能となる条件が被食者の生産性の指標である環境収容力に依存しなくなる。さらに,環境収容力が大きくなると,被食者-雑食者系にリミットサイクルが現れるが,環境収容力の増加とともにこのリミットサイクルが反発的となり,消費者の侵入が可能となる。環境収容力が大きくなると,被食者-消費者系にもリミットサイクルが現れ,被食者と雑食者の遭遇率が小さいときには3種共存平衡状態と双安定になる。つまり,消費者の個体数振動は雑食者の侵入を困難にするが,雑食者の個体数振動は消費者の侵入を容易にするため,個体数の振動が起こるような高い生産性のもとでも,消費者の絶滅は避けられる。