| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(口頭発表) E2-30 (Oral presentation)
農業害虫に対する生物的防除の有効性を検討する場合、害虫と天敵の生活史、行動、個体数変化のみに注目するだけでなく、人為的な栽培管理が害虫と天敵の個体群動態や生物的防除の効率に及ぼす影響を考慮する必要がある。本研究では、質の良い果実を得るために一部の幼果を間引く摘果処理に注目し、摘果が生物的防除の効率に及ぼす影響を、作物-害虫-天敵の系に関する数理モデルを用いて調べた。作物の果実には3つの生長段階(花、幼果、果実)があり、幼果期にすべての作物個体に対して同程度の摘果が行われると仮定した。作物個体は2次元格子空間上に分布し、害虫及び天敵は近傍作物のみに分散することができると仮定した。計算機シミュレーションによる解析の結果、摘果を行わない場合、天敵個体群の増加によって、害虫はたとえ一時的に増加しても速やかに減少した。一方、摘果量が増加すると、天敵個体群は存続しているにもかかわらず、摘果なしの場合に比べて害虫個体群の減少が鈍くなった。この傾向は、天敵の分散率が小さいか害虫の分散率が大きい場合により顕著であった。最後に、摘果量と分散率の観点から、害虫を効率よく防除するための天敵個体群の初期分布について考察する。