| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) F1-15 (Oral presentation)

温帯山地草原での温暖化実験

*鈴木亮(筑波大・菅平セ)

温暖化と雪解け早期化に対する温帯山地草原の反応を、温暖化実験と自然の雪解け勾配調査の2つの手法を用いて、5年間研究した。

温暖化実験: 1 x 1 mの温暖化区、対照区、除雪区を各5か所ずつ設置し、各処理区の半分を土壌撹乱した。温暖化区は高さ約2mのOTCを設置、除雪区は人為的に早く雪を除去した。各実験区内の積雪深、気温を測定した。

自然下の雪解け勾配調査: 1 x 1 mの調査区120個を設置し、各調査区の雪解け時期を測定した。温暖化実験区と雪解け勾配区内の雪解け後の種組成、9月の地上部バイオマスを測定した。

結果1.気候条件の変化: 対照区と比べて温暖化区では、調査期間を通して平均1.3℃気温が高く、雪解け日は16-26日早かった。一方、雪解け後から氷点下になる日数は増加した。すなわち、温暖化区は、早い雪解けで霜害のリスクを高めた。

結果2.温暖化は植物の成長開始を早めるが、種数、種構成、バイオマスの変化はすくない: 雪解け後からの総種数は、温暖化区が有意に早く増加した。一方、バイオマスは差がなかった。また、6つの機能群に分けた解析では、種数やバイオマスに差が見られなかった。

結果3.人為的な除雪や自然下の早期雪解けは、植生に変化をもたらさない: 人為的に早く雪を除いた除雪区では、種数やバイオマスに対照区と差がなかった。6機能群に分けた解析でも、一つの群も差が検出されなかった。自然条件の雪解け勾配に対しても、ほとんどの機能群で影響を受けなかった。

結果4.土壌撹乱は温暖化の効果を打ち消す: 土壌撹乱で植生を破壊すると種数・バイオマスは減少し,温暖化区、除雪区、対照区の差がなくなった。

結論: 本研究の山地草原は、温暖化や早期雪解けにほとんど反応せず、頑健性を示した。その理由として、遷移後期、気候変動を常に経験、長い生育シーズン、高い種多様性が考えられる。


日本生態学会