| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(口頭発表) F1-18 (Oral presentation)
常緑広葉樹林域にあたる関東の都市近郊において、1986年に針葉樹人工林が気象害を受けてから放置され、その後広葉樹二次林として自然再生する過程における植生の変化を、攪乱後8年目から26年目までの21年にわたり継続的に調査した。調査区では10の地形型が認識され、これらを5つの地形区分に整理した。また、調査区を5m四方のグリッドで22分画し、うち9分画で継続してほぼ毎年林床調査を行った。内容は高さ1.3m未満の全植物および1.3m以上のつる・着生植物を対象とした植生調査と、高さ1.3m以上のつるを除く木本について毎木調査を行った。
その結果、継続調査した9分画を合わせた範囲で出現した総種数は、調査開始年の1994年で134種であった。1995年の141種が最大で、以降は振幅はあるものの種数は低下し続け、2013年ではピーク時の59%にあたる83種となった。分画ごとにみると、調査開始当初では、下部斜面域の分画で種数が少なく、尾根など光が入りやすい分画で種数が多い傾向があった。しかし、2013年では全体的に種数が少なくなり分画間の差は縮小した。
本研究の結果から、少なくとも常緑広葉樹林域では森林の発達過程初期で、相観としての高木林は短期間で形成されるが、一部のシダや着生植物など常緑広葉樹の極相林を特徴づけるような種はすぐには増加しなかった。むしろアラカシ、アオキなど特定の常緑樹の急激な増加によって好陽性の種が失われ、短期的には多様性が著しく低下することが確認された。既報では発達した二次林と自然林の間で樹種構成に大きな差があることが確認されたが、草本種を含めた出現種全体で見ても同じことが言え、常緑広葉樹林域の自然植生の再生は短期間では難しいことが示唆された。