| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(口頭発表) F1-19 (Oral presentation)
国指定の天然記念物「小堤西池のカキツバタ群落」は、愛知県刈谷市の北部にある。ここに1984年に6か所の永久枠(PQ)と1985年に3本のベルトを設置し、30年にわたって群落調査を行ってきた。その結果は「10年後」「20年後」と報告した。秋(2014)の植生学会では30年後のPQの結果を報告した。今回はベルトでの観察をまとめた。
1.池の水位は上昇傾向にあり、PQではそれに伴ってヨシの増加が観察された。ベルトでもその傾向は同じだった。同様にカキツバタでも個体数は増加傾向で、花茎数では顕著な増加が見られた。
2.水位の上昇によって減少した種類も数多く観察された。イヌノハナヒゲ、オオミズゴケ、ヌマガヤなどで、それらの主な生育地は岸辺の湿地部であった。水位は年による変動があり、それが低下した時にはイヌノハナヒゲ、チゴザサ、ミミカキグサなどが池の浅い部分で出現した。水位の低下は池の浅い部分で影響を与えていた。
3.ベルト中の出現種の消長を見ると、1993年の変化が最も大きかった。この年は水位が低下した年であった。また、2007~2010年にも大きな変化が認められた。特に2007年では出現種数や池全体での水草の種類の増加があった。これらの変化も水位の低下が原因と考えられる。
4.池の深場に生えるカンガレイは、調査開始した頃と1995年に一度現れたが、その後観察さ荒れていない。水位の変化とは異なった要因が影響していると考えらる。
水位の上昇はカキツバタの生育には良い方向で影響しているといえるが、競争者と考えられるヨシの増加も顕著であった。また、カキツバタ群落として考えた場合、その構成種数は減少しており単純化しているといえる。これらのことから、水位の上昇はカキツバタ群落にとっては良い状況ではないと思われる。