| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(口頭発表) F2-36 (Oral presentation)
タケ・ササ類は長期の栄養繁殖の後に一斉に開花枯死する生活史をもつ。栄養繁殖期間 (開花周期)は種によって3年から120年と著しくばらつき、熱帯から温帯にかけて開花周期が長くなっていく地理クラインが存在する。また、熱帯性のササは地下茎が短く、栄養繁殖の際ごく近傍にラメットを生産するのに対して、温帯性のササは水平方向に長い地下茎を持ち、ラメットはその生産者から離れたところに定着する。その結果、ジェネットは互いに入り交じる空間構造をつくる。本発表では、このような栄養繁殖上の特性を考慮した空間明示的数理モデリングを利用し、ササ・タケ類において開花周期の進化に地下茎構造が与える影響を調べた。
進化モデルを解析した結果、地下茎が長くなるに従って開花周期が長くなると予測された。この依存性は栄養繁殖の際に、同一空間をめぐって同一ジェネットに属する近親者間での競争が地下茎の長さによって調節されることに起因していた。地下茎が長い場合には、同一空間をめぐる近親者競争が低く維持されるために、栄養繁殖を継続することが適応的になったと考えられる。また、近親交配に伴う近交弱勢の効果を調べたところ、地下茎が短いときには、近交弱勢によって、開花周期が長く進化することがわかった。地下茎が長い時には、近親交配が起こりにくく、その効果は弱くなった。これらの結果から、地下茎構造の局所適応の結果、開花周期に地理クラインが形成された可能性について議論する。