| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(口頭発表) G1-22 (Oral presentation)
生物は、様々な生物間相互作用を通じて多様化してきた。アブラムシは、寄主植物との特異性が非常に高く、利用する寄主植物種ごとに分化している。また、アブラムシは、アリ類と共生関係を結ぶこともあり、その共生関係を通じて随伴アリに甘露成分や体表面炭化水素の組成により特異化していることも明らかになっている。アブラムシの中でもクチナガオオアブラムシ属は、寄主植物種に対する特異性が高いだけでなく、随伴アリ種と絶対共生系を営んでいると考えられている。そのため、本研究は、クチナガオオアブラムシ属の種が寄主植物もしくは随伴アリのどちらに特異化しているかを明らかにすることを目的とした。我々は、東日本を中心にクチナガオオアブラムシ属の種を採集し、寄主植物の特異性と随伴アリ種の特異性を調べた。クチナガオオアブラムシ属は、先行研究によりmtDNA配列を用いた系統樹と種の一致性の高さが明らかになっている。そこで、先行研究で用いられているmtDNA(COⅡ領域、670bp)の配列を個々のサンプルについて決定し、先行研究で得られている配列と照合することで種を決定した。これらの結果、クチナガオオアブラムシ属の多くの種が、ほぼ1種の寄主植物を利用していることが明らかになった。また、クチナガオオアブラムシ属のすべての種が、ケアリ属の複数種と共生関係を結んでいた。これらの結果と合わせてクチナガオオアブラムシ属の系統関係を推定する際に外群として用いたクリオオアブラムシなどの種がケアリ属と共生関係を結ぶことから、クチナガオオアブラムシ属が随伴アリ種よりも寄主植物との相互作用により多様化してきたことが示唆された。