| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) G2-27 (Oral presentation)

日本沿岸における海産貝類イシダタミ類の遺伝的変異

*山崎大志, 千葉聡 (東北大・生命) , 池田実, 木島明博 (東北大・農)

イシダタミ属Monodontaは殻形態の大きな変異のため、分類上の混乱が生じている。また殻の色彩で識別可能なクロヅケM. neritoidesとクビレクロヅケM. perplexa perplexaなどについてもその遺伝的な関係が不明なものを含んでいる。近年の分子系統解析によりオキナワイシダタミM. labioとイシダタミM. labio form confusaが遺伝的に区別できることが明らかになったが、小笠原群島産のクサイロイシダタミM. australis・オオクロヅケM. perplexa boninensisについては解析が行われていないため、その由来は明らかになっていない。そこで本研究では日本沿岸のイシダタミ属7種についてmtDNA のCOⅠ遺伝子、核DNAの28S領域を用いて分子系統解析を行った。

その結果、クロヅケとクビレクロヅケは遺伝的に分化していた。クビレクロヅケにおいては個体間で殻のくびれに程度の差がみられた。小笠原諸島のオオクロヅケは太平洋起源の独立種ではなく、日本沿岸から由来したクビレクロヅケの地域個体群であることが示された。一方、小笠原諸島のクサイロイシダタミは、日本沿岸のイシダタミに由来する小笠原固有種であり、従来本種が含められていた太平洋の広域分布種M. australisとは別種であった。オキナワイシダタミとイシダタミについて、一部の地域において殻形態が系統を反映していない個体がみられ、2種が同所的に生息する環境では交雑が起こっている可能性が示唆された。オキナワイシダタミは南西諸島の系統と本土に分布する系統とに分けられた。これらの結果に基づき、本グループの生物地理学的な起源、進化史について議論する。


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