| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(口頭発表) G2-30 (Oral presentation)
国内最長のミミズとして知られるハッタミミズを含むジュズイミミズ科は,形態的特徴や分子系統解析から陸生大型ミミズ類の中で最も原始的なグループであると考えられている.他科の陸生大型ミミズ類と同様に森林や草地の土壌に生息する種の他に,水田・湿地のような半水生環境にのみ生息する種も知られている.体長20センチ以上になる大型種がいる一方で,成体でも数センチ程度にしかならない小型の種も存在する.南アジアに多様性の中心を持つ分類群であり,分布域の北方に位置する日本列島からはこれまでに9種が知られているが,1930年代以降その種多様性について詳細な研究がなされた例はない.
本研究では日本産ジュズイミミズ類の系統関係を明らかにするため,ミトコンドリアDNAのCOI,16Sおよび核DNAの28S,18Sを用いた分子系統解析を行った.解析にはこれまでに,本州,四国,九州,沖縄,八重山地方の計40地点から得たジュズイミミズ類を用いた.これには既知種4種と少なくとも18種の未記載種が含まれていた.分子系統解析の結果,日本産ジュズイミミズ類は大きく2つの系統にわかれた.形態観察の結果と照合すると,両系統間では生殖器の形態も大きく異なっていた.また,半水生の種は複数の系統で見られた.日本列島に生息するジュズイミミズ類の特に大型種に関しては,その局所的な分布からかつては人為的移入種とする考察もなされていたが,分子系統解析の結果,東北,北陸,西日本に生息するジュズイミミズ類の中には,日本国内で多様化した系統が存在することが示唆された.