| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) J2-34 (Oral presentation)

共食いによるストイキオメトリーの二型化

*高津邦夫(北大・環境科学),岸田治(北大・FSC)

動物は餌を食べたり、体を構築したり、排泄することで生態系内の物質の流れに影響を与え、その影響は体や排泄物のストイキオメトリー(化学元素の量や比率)に依存する。生態系内の物質の流れは、系内の様々な生物の個体数に影響するので、動物の体や排泄物のストイキオメトリーが何に規定されるかを調べることは興味深い。従来、同一種の体や排泄物のストイキオメトリーは均一であることが仮定されてきた。最近、同一種であってもサイズ、形態、食う餌の種類などの形質に応じて体や排泄物のストイキオメトリーが異なることが報告されているが、その事例はとても少ない。そこで、本研究は、同一種内でみられる形質と体や排泄物のストイキオメトリーの関係の事例を追加し、さらに、その関係が何に規定されているかを特定することを目的とする。私たちはエゾサンショウウオ幼生を対象に室内実験を行った。サンショウウオの様々な形質は、共食いに強く影響されることが知られている。そこで、私たちは、共食いの有無に応じてサンショウウオの体や排泄物のストイキオメトリーが異なると予測した。共食いを操作した室内実験によって、共食い環境で生じる、大型で捕食に適した大きな顎を持ち、大型餌種であるエゾアカガエルのオタマを盛んに食う共食い個体は、そうでない非共食い個体に比べ、体のリン含有率が高く、窒素とリンの排泄量が多く、排泄物の窒素とリンの比率が低いことが分かった。一方、共食いの有無に関係なく、非共食い個体の体や排泄物のストイキオメトリーに違いはなかった。したがって、共食いは、共食い個体と非共食い個体の出現を通して、体や排泄物のストイキオメトリーの二型をもたらした。共食い個体でみられた大型化や形態変化は、捕食成功や食う餌の量に影響することが知られているが、本研究は、さらに、体や排泄物のストイキオメトリーを改変することを通しても、物質の流れに影響を与えることを示す。


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