| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(口頭発表) K2-27 (Oral presentation)
佐渡島においては、2008年のトキの放鳥以降、のべ177羽が訪中されている。2014年までに、のべ120巣の営巣が確認され、2012年に3巣、2013年5巣、2014年14巣でヒナの孵化が確認され、のべ42羽の雛が巣立っているが、♀あたりの繁殖成功率は10〜30%に過ぎない。PVAモデルによると個体群を維持するためには、60%以上の成功率が必要と考えられる。自立可能な再導入個体群を確立するには、野外での繁殖成功率を改善することが必要である。環境省佐渡自然保護官事務所から提供された2010-2014年の飼育下の繁殖情報を元に、個体情報データベース、飼育履歴データベースを構築し、放鳥トキの飼育履歴が野外でのヒナの孵化率、繁殖特性に与える要因を解析した。孵化雛が巣立てるかどうかは捕食を回避できるかどうかという外的要因を含むため、ヒナを孵化させることのできる条件を解析した。孵化成功を独立変数として、個体変数として、年齢、抱卵・育雛形態、出自家系を、つがいの変数として過去の繁殖成功経験、受精卵の有無、クラッチ次数、繁殖時期を従属変数(固定効果)とし、ペアIDと繁殖年をランダム効果として一般化線形モデルで解析した。その結果、孵化成功に影響を与えていた要因は、過去の繁殖履歴、受精卵確認、♂親の育雛形態の3変数であった。つまり、♂親の出自が自然育雛である過去に受精卵が確認されているか、繁殖経験があるペアが雛を孵化させる可能性が高いといえる。また、巣立ち雛数を独立変数としても同じ変数が選ばれた。これらの結果をもとに、繁殖成績を改善し、再導入個体群を自立させるには、どうすればよいか考察したい。