| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-003 (Poster presentation)

三宅島2000年噴火被害地において植食者のトップダウン効果は遷移初期植物群集に影響を与えるか?

*守容平(筑波大院・生命環境),上條隆志(筑波大・生命環境),山路恵子(筑波大・生命環境),廣田充(筑波大・生命環境),橋本啓史(名城大・農)

陸上一次遷移における栄養段階間相互作用研究は少なく、その研究は一次遷移メカニズムについて新しい知見をもたらすことができる。火山遷移初期は貧栄養状態であるため栄養塩を多く獲得できる植物は成長に有利である一方、植食性昆虫に選好される可能性がある。本研究の調査地である三宅島は2000年に大噴火し、火山灰堆積地ではハチジョウススキ、ハチジョウイタドリ、オオバヤシャブシが優占し、植食性昆虫イズアオドウガネの大量発生が報告されている。本研究では、遷移初期植物に対するイズアオドウガネの食害程度、選好性とそのメカニズムを植物の栄養価と防御機構から明らかにすることを目的とした。

現地調査ではルートセンサスと網掛け実験を行い、イズアオドウガネの資源選択性指数と植物の食害率を算出した。安定同位体比分析からイズアオドウガネの餌に対するC3植物寄与率を求め、植物のC・N・P・Ca・K・Mg濃度と総フェノール量(TP)・縮合タンニン量(CT)、LMAを測定した。

元素濃度からハチジョウイタドリとオオバヤシャブシがイズアオドウガネに選好されると考えられ、実際にハチジョウイタドリとオオバヤシャブシ、特にハチジョウイタドリが選好されていた。一方、TPとCTはハチジョウススキが最も少なかった。イズアオドウガネはCTには影響されず、N濃度の高い植物を選好しているようだ。加えて、K・Ca・Mgも選好している可能性やCT以外のフェノール類を忌避する可能性が示唆された。本研究は貧栄養地において植物の栄養価が植食者の選好性を決める一因であり、そのトップダウン効果が遷移初期植物の遷移進行方向を決める可能性を示した。


日本生態学会