| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-004 (Poster presentation)
ミズゴケの発達様式は泥炭湿原の生態系機能や種多様性を規定する上で重要な役割を果たしている。特にミズゴケ湿原では、泥炭採掘が北半球冷温帯域で広範に行われており、そのような地域でのミズゴケ復元は、泥炭湿原の生態系機能の復元のために必須である。北海道北部のサロベツ湿原では、採掘後に形成された裸地にミカヅキグサが侵入し草地を形成し、その後ヌマガヤ草地がミカヅキグサ草地と置き換わる。しかし、そのヌマガヤ草地には、ミズゴケが速やかに侵入できるサイトと侵入できないサイトが存在する。これらのサイトにおいて、ミズゴケとヌマガヤの関係を明らかにすることは、泥炭湿原復元に関する知見を提供するものと思われる。
調査は、1972年に採掘されたサロベツ湿原泥炭採掘跡地に発達するヌマガヤ草地に、50 cm × 50 cmの方形区を50個設置し行った。これらの方形区において、2014年8月に植生調査を行い、各出現種の被度、及び植生高を記録した。2014年5月から10月にミズゴケの伸長量、NDVIを測定した。
調査の結果、ヌマガヤ被度が高くなるにつれミズゴケ被度は低くなる傾向を示した。一方、ヌマガヤの被度が40%以下の方形区では、ヌマガヤ被度が高いとミズゴケの伸長量が大きくなった。以上の事から、ヌマガヤが優占することは必ずしもミズゴケの被度拡大を促進しないが、低被度のヌマガヤはミズゴケの伸長成長を促すことが明らかとなった。従って、適度のヌマガヤ定着地においてミズゴケは侵入・成長が良好となる。また、NDVI値と、各種の合計体積(被度×植生高)には正の相関が見られ、NDVIを測定することで非破壊的にバイオマス推定ができる可能性が示された。今後、ヌマガヤバイオマスを非破壊的に測定することで、詳細にミズゴケとヌマガヤの関係が明らかにできる。