| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-006 (Poster presentation)
霧ヶ峰高原に成立する亜高山帯半自然草原は,採草地利用が中止して約50年が経過しており,一部では樹林化が進行している.その一方で,山稜部では偏形樹や構造土の形成が確認されており,その形成要因は強風や寒冷等の条件が厳しいためであると考えられている.したがって,特に山稜部のニッコウザサやヒゲノガリヤスを中心とした群落は風衝の影響を強く受けて成立していると考えられる.しかしながら,亜高山帯半自然草原に関する研究は少なく,群落と立地条件との関係は明確ではない.そこで本研究では,霧ヶ峰高原山稜部において群落と立地条件の変化を連続的に把握して,地形に沿った群落組成と構造,および群落が成立する立地特性を解明することを目的とした.
調査地は霧ヶ峰高原の山稜部から5か所を選定した.各々の南向き斜面と北向き斜面において,斜面上部から下部にかけてのライン上に1m×1mの方形区を規則的に設置した.方形区数は計234個となった.各方形区で植生調査と立地条件調査を実施した.
山稜頂部の群落はウスユキソウやイブキジャコウソウなどの岩礫地に生育する低茎植物が特徴的に出現した.一方,風背斜面の群落にはツクバトリカブトやハンゴンソウなどの湿生環境に特徴的な高茎草本が出現した.TWINSPANとDCAの結果から,これらの群落は山稜上の位置や斜面方位の差異に伴う土壌水分の変化により連続的に分布していることが示された.山稜頂部の群落は乾生的な立地に成立し,南向き斜面下部や北向き斜面の群落は湿生的な立地に成立していた.また,地温観測により山稜頂部では土壌の凍結融解作用が生じやすいことが明らかとなった.以上から,霧ヶ峰高原の山稜頂部では乾燥,低温による不安定な土壌条件により,風衝性の特異的な群落が成立していると考えられた.