| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-007 (Poster presentation)
台風の強風による攪乱は生態系を大きく変化させる.とりわけ沿岸域では強風,高潮による影響が大きく,マングローブ林,水界構造,底質,底生生物などの生態系の変化に対するモニタリングが台風被害・回復の考察における課題となる.フィリピンは熱帯海洋性気候に存在し,毎年約19回の台風が通過する.2013年11月にフィリピン中部諸島を横断した超大型台風である平成25年台風第30号(アジア名:Haiyan)の被害は特に大きく,中部の島々では60m/s以上の強風と高潮により,生態系だけでなく人間の生活や経済にも多大な被害を残した.
フィリピンパナイ島の北岸にあるバタン湾周辺(約6,067ha)のマングローブ林は1988 年から90%以上が養殖池に転換され,2008年に残存しているマングローブ林は約408haに減少した.バタン湾周辺では数haでパッチ状に残る天然のマングローブ林,植林されたヤエヤマヒルギ林,堤防に線状に残るマングローブが散在している.本研究ではバタン湾周辺を,台風被害前(2013年3月22日:QuickBird),台風被害1ヶ月後(2013年12月10日:WorldView2),台風被害3ヶ月後(2014年2月3日:WorldView2) の3つの衛星画像と1996年版の地形図を用いて,台風におけるマングローブ林の被害と回復についての調査を行った.モニタリングの結果,台風前から台風被害3ヶ月後のバタン湾周辺のマングローブ林の減少は約80haに及び,最大約2haのサイズでパッチ状に被害が及んでいることが確認できた.また,北側のマングローブ林の被害が大きいことが分かった.