| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-011 (Poster presentation)
根が土壌中に貫入し伸長する能力は、植物の生存と成長に大きく影響する。これまで根の土壌貫入能力の研究は、農業機械による土壌圧密化が問題となる農作物を中心に行われてきた。一方非農耕地においても、人為的攪乱後の植生回復が土壌の圧密化によって妨げられていることが示唆されている。しかし野生植物の根の土壌貫入能力を評価した研究はほとんど無く、根の土壌貫入能力が植生回復にどの程度関係しているのか分かっていない。そこで本研究では、モンゴル草原に生育する野生植物を対象として根の土壌貫入能力の種間差を明らかにし、圧密土壌における植生の自然回復との関係を考察した。
モンゴル草原に生育する10種の草本を実験に用いた。砂を充填したポットに様々な硬度のワックス層を挿入し、発芽後の実生を移植した。ワックス層を根が貫通したかどうかを観察し、根が50%の確率で貫入できる硬度(P50)を算出して根の土壌貫入能力の指標とした。
根の土壌貫入能力には8倍以上の種間差があり、Salsola collinaが最も高く、Artemisia frigidaが中程度、Stipa krylovii やAllium odorumで低かった。この種間差はモンゴル草原の人為的攪乱後の圧密土壌における植生遷移系列をおおむね反映しており、遷移初期に出現するS. collinaやArtemisia adamsiiは根の土壌貫入能力が高く、遷移後期に出現するS. kryloviiは根の土壌貫入能力が低かった。この結果は、圧密土壌における植生遷移に根の土壌貫入能力の種間差が関係していることを強く示唆している。