| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-018 (Poster presentation)
不嗜好植物によってレフュージアが形成され、嗜好植物への採食圧が低下する保護効果が報告されている。シカによる食害に対して、この効果を利用した植生の保全が考えられているが、不嗜好植物群落が嗜好植物にとってのレフュージアとして働くためには、採食圧を低下させるだけでなく、競争的な影響により他植物の成長にとってマイナスにならないことも必要である。本研究では、防鹿柵内・外における不嗜好植物群落内の植生を比較することで、不嗜好植物が他植物の被食程度や成長に与える影響を評価することを目的とした。これらの影響は物理的な密集による保護、隠蔽による保護と、群落の生産構造により変化すると考え、生産構造の違う不嗜好植物であるイグサとイワヒメワラビを比較することで不嗜好植物が植生に影響を与える要因について明らかにすることを試みた。
調査はシカの不嗜好植物であるイグサとイワヒメワラビに覆われている湿地性の草原で行った。2種両群落に対してそれぞれの生産構造図をもとに刈取りを行い、被度を調整し、柵内・外で群落内の嗜好植物の生存率や多様度を測定した。そして、不嗜好植物の被度が嗜好植物に及ぼす影響の有無を一般化線形モデルで検証した。
柵内では不嗜好植物の被度は嗜好植物の生存率に影響を及ぼしていなかったが、柵外では正の影響を及ぼしていた。このことから、不嗜好植物群落が植生に与える保護的な影響には不嗜好植物の被度が関わっていることが示された。植物種間の保護的な影響として採食圧の低下と同時に、攪乱による種間競争の軽減が示唆された。また、保護的な影響はイグサよりもイワヒメワラビで大きいことが示された。一方で、イワヒメワラビ群落ではイグサ群落と比較して植物種多様性が低くなっており、イワヒメワラビ群落の競争的な影響の大きさが示された。