| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-020 (Poster presentation)
植生遷移の進行に伴い、生活史戦略が異なる種が交代し、群集組成や生態系機能は変化する。葉や材などの形質は、種の生活史戦略と関係するため、遷移に伴う群集組成や生態系機能の変化の評価に有用だと考えられる。多くの研究で、形質によって群集組成を評価する際に、形質を種固有の値とみなすが、実際には種内変異も無視できない。特に、光環境による可塑性を適切に考慮する必要がある。また二次遷移系列の森林で、形質を利用して、複数の生態系機能を総合的に評価した研究は少ない。本研究の目的は、(1)遷移の進行に伴う群集の変化を種内変異も考慮して形質によって評価すること、(2)複数の生態系機能の変化を形質によって評価することである。
和歌山の温帯で林齢が10~100年の9つの森林に出現する59種の木本種について、葉・材形質(葉重/葉面積比や葉強度、材密度など)を測定し、形質の群集レベルの平均と多様性を評価した。生態系機能(純一次生産、葉回転率、葉分解速度、土壌炭素、土壌無機態窒素)を測定し、形質の群集平均や多様性が生態系機能をどの程度定量的に説明するかを検証した。
遷移の進行に伴い、群集レベルで葉は厚く、強度は高く、窒素濃度は低下し、δ13Cは増加し、資源浪費型から、資源節約型でかつ乾燥耐性の高い群集へと移行した。群集の形質多様性は、葉の厚さや強度は多様になり、逆に葉のδ13Cは収斂した。種内変異は群集の平均値や多様性に大きく影響したが、遷移に対する定性的なパターンは変えなかった。遷移の進行に伴い、葉面積あたりの成長量、葉回転率、葉分解速度は低下し、その変化は形質によってよく説明できた。一方で、土壌の生態系機能の変化は一貫しなかった。これらから、群集組成といくつかの生態系機能の評価において形質は有用であるといえる。