| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-066 (Poster presentation)

重金属蓄積性樹木リョウブにおけるNi, Co蓄積の影響

*山口毅志, 竹中千里, 富岡利恵, 東亜紗子 (名大院・生命農)

リョウブ(Clethra barbinervis)は日本各地に分布し、特に蛇紋岩地帯や鉱山跡地などの重金属含有土壌で生育でき、樹体にニッケル(Ni)とコバルト(Co)などの重金属を高濃度に集積することが知られている。本研究では、リョウブの重金属の蓄積特性メカニズムを解明することを目的とし、水耕栽培により重金属の蓄積とその影響を調べた。

リョウブの水耕栽培実験では、実際の土壌中の濃度を参考に、1/10 Hoagland液にNiを250 µM、Coを50 µMとなるように加え、Ni添加液、Co添加液、無添加溶液(Cnt液)を調整した。また、土壌中のNiとCoの分布の不均一性を考慮し、リョウブ1個体の根を二分して片方をNi液、他方をCo液に浸した処理区をNi/Co区とし、同様にNi/Cnt区、Co/Cnt区、Cnt/Cnt区の4処理区を設定した。21週間施用後に収穫し、根の元素濃度測定を行った。葉については全葉での測定に加え、細胞壁画分、細胞小器官画分、可溶態画分の3つの細胞画分における元素濃度測定を行った。

元素濃度測定の結果、根においてはNiとCoをそれぞれ施用していない根からもNiとCoが高濃度に検出され、根がNiとCoの貯蔵器官であることが示された。全葉の測定ではNiとCoが高濃度に蓄積しており、Ni/Co区においても両元素が高濃度に蓄積していることが確認された(Ni:116-749 µg/g、Co:242-1103 µg/g)。細胞画分別の測定により、Ni、Coは主に細胞壁画分と可溶性画分に存在することが確認され、Ni、Co共に細胞壁と可溶態部における蓄積機構がある可能性が示された。

また、全葉においてCo施用区でCo蓄積に伴って硫黄(S)濃度が高くなり、特に可溶態画分に多いことが示され、可溶態画分においてSがCo蓄積に関係している可能性が示唆された。


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