| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-072 (Poster presentation)
ススキはAlが植物毒性を示す酸性土壌においても優占し、Al耐性を有するという報告があるが、Al解毒物質に関する研究は少ない。また一般に内生菌が感染した植物の環境ストレス耐性が上昇するという報告がある。そこで本研究では内生菌の関与したススキのAl耐性機構を化合物の面から解明することを目的とした。
調査地のススキの根の元素分析の結果、2000 mg/kg DW以上の高濃度のAlを蓄積していた。そこで根の化合物の分析を行ったところ、Al解毒物質として報告のあるmalic acidやchlorogenic acidなどが検出された。またススキの根から内生菌として分離したChaetomiumの中に、Al解毒物質として機能するsiderophoreを産生する株を確認した。
野外におけるススキ-内生菌相互作用によるAl解毒機構を確認するために、γ線滅菌した調査地土壌にススキの滅菌実生を植え、siderophoreを産生したChaetomium sp.及び出現株数の多かったPhialocephala fortiniiを用いて接種試験を行った。その結果、接種区ではAl解毒物質と考えられるchlorogenic acid類縁体の増加及びasparagineの増加傾向が確認された。また、Phialocephala接種区の根では活性酸素除去酵素の産生に必要なFe濃度が増加しており、Alに起因する活性酸素の除去を促進すると推察された。一方、Chaetomiumの産生するsiderophoreが検出されなかったことから、体外へ分泌されてススキのAl過剰吸収を抑制する可能性が示唆された。
以上から、ススキはAl解毒機構を有するが、内生菌の存在によりその解毒機構がさらに増強されることが示唆された。