| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-073 (Poster presentation)
街路樹には、光合成によって温室効果ガスであるCO2を吸収し、都市の温暖化を緩和させる効果が期待されているが、夏季の乾燥ストレス等によって光合成機能が低下している可能性がある。街路樹のCO2吸収、蒸散機能を対象とした研究は多数あるが、屋上や狭所でも栽培可能な低木類の乾燥ストレスに対する光合成の生理的機能についての研究例は少ない。そこで日本における低木の街路樹の種類では最も多く植えられているツツジ類のヒラドツツジ(Rhododendron × pulchrum)を用いて実験を行った。2013年6月から2014年年9月まで、ヒラドツツジをガラス温室内でポット栽培し、毎日1回潅水を行ったもの(コントロール区)と2日ごとに1回潅水を行ったもの(乾燥ストレス区)に分けた。2013年8月、9月にはそれぞれの個体からLi-6400(Licor社,USA)を用いて光合成速度(A)、蒸散速度(E)、気孔コンダクタンス(gs)、葉内CO2濃度(Ci)を測定しA-CiカーブからVcmax、Jを得た。また、2014年には葉の形態構造観察も行い葉組織内の空隙率、葉肉細胞の表面積等を算出した。2013年8月における測定では、コントロール個体とストレス個体間のVcmax、Jに有意差は見られなかったが、ストレス個体のgs、Eはそれぞれ約10 %、約40%低下していた。一方9月における測定では、ストレス個体でVcmaxは約25 %、Jは30 %低下し、gs、Eはそれぞれ約50 %低下していた。光合成機能の低下要因として、葉の形態、構造の変化が予想されたが、今回の観察では実験上の水ストレスによる構造変化は顕著には見られなかった。9月においてgs 、Ci、Vcmax、Jの低下が見られたことから、気孔閉鎖によるCO2拡散の低下と代謝制限によって光合成速度に制限がかかっていたと考えられる。