| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-074 (Poster presentation)
シダ植物は葉と根茎のみから成る比較的原始的な構造を持つが、様々な環境に適応して広く分布している。このシダ植物は約3億年前にコケから進化し、根や仮道管のような水輸送に関する組織を大きく発達させることで様々な陸上環境に適応してきた。植物の水分機能と光合成機能は植物の生存戦略に大きく関わる。植物体への水供給が不十分な状態では蒸散による水損失が需要を上回るため、気孔閉じることで植物体内の水が失われるのを防ぐ。しかしこの気孔閉鎖により、十分な二酸化炭素が固定できないために光合成が制限要因となる。このように、水の損失と二酸化炭素の獲得はトレードオフの関係にある。植物体への水供給と二酸化炭素獲得との関係を見る上では、「地下部の根茎」と「地上部の葉」のみから成るシダ植物は研究材料として適している。そこで本研究では、仮道管の発達に関して系統的な位置の異なるシダ植物を用いて光合成機能・内部通水性・内部構造を調べることで水の供給が生理機能に及ぼす影響を調べた。その結果、仮道管サイズや形態・配置が種によって大きく異なっていることが確認された。さらに、比較的原始的な種では気孔コンダクタンスが小さく、光合成速度も低い傾向にあることが確認された。仮道管面積/維管束面積の面積比が大きい種は、気孔コンダクタンスが高く、同様に最大光合成速度も高かった。水分生理の面では水供給が、水損失と光合成制限要因である気孔コンダクタンスに大きな影響を与えている可能性が示唆された。これらのことより、葉柄内部の仮道管発達は水の供給に影響を与え、十分な水の供給により気孔コンダクタンスを高く維持できるために、光合成速度も同様に高い値を示したと考えられる。