| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-077 (Poster presentation)

落葉広葉樹における木部の構造的特性と貯水性の関係

*粟飯原友,三木直子(岡大院・環境),小笠真由美(東大院・新領域)

木部のキャビテーション抵抗性の低い種は通水機能の損失回避や、回復性の高さにより通水機能を補償する。これらの補償機能には、木部の貯水性の関与が示唆されているが、貯水の程度に加え、貯水に寄与する木部構造や、樹体の乾燥強度による貯水組織の違いの有無など不明な点が多い。本研究では、この点に着目して木部の構造的特性と貯水性の関係を明らかにすることを目的とした。供試植物には通水特性が異なる落葉広葉樹6種(カツラ、イヌコリヤナギ、ヤマザクラ、シラカンバ、アオハダ、イヌシデ)のポット苗を用いた。木部の貯水性の指標として、木部の水ポテンシャルの変化に対する木部含水量の変化で表されるキャパシタンスを測定し、乾燥程度が小さい段階および乾燥程度が大きい段階(キャビテーションにより通水機能の約50%を失う程度)の貯水性(それぞれCinitial、CΨ50)を評価した。木部の構造的特性として、各木部組織(道管、柔細胞、木部繊維)の面積割合、密度、柔細胞に接した道管の割合を測定した。また、湿潤時、乾燥程度が小さい段階、乾燥程度が大きい段階で樹幹より凍結試料を採取し、cryo-SEMにより木部内の水分布を観察、比較した。その結果、木部の貯水組織として、全ての種において道管が寄与し、種によっては木部繊維も寄与していた。乾燥程度の小さい段階では、全ての種において木部張力の増加を緩和するために一部の道管の水が使われ、さらなるキャビテーション発生による通水機能の損失を回避していると考えられた。乾燥が進行しキャビテーションがさらに発生した際には、残存している道管の水、また種によっては木部繊維の水が関連し、道管の再充填による通水機能の回復が起こっている可能性が考えられた。


日本生態学会