| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-078 (Poster presentation)

過重力下におけるヒメツリガネゴケの光合成能力と形態変化

*竹村香里(京工繊大・院),蒲池浩之(富大・院・理),久米篤(九大・院・農),藤田知道(北大・院・理),唐原一郎(富大・院・理),半場祐子(京工繊大・院)

宇宙ステーション内での人間の長期滞在を可能にするためには、食料生産機能とガス処理機能を持つコンパクトな植物栽培システムの構築は重要課題である。コケ植物は小型で根がなく省スペースで容易にかつ大量に培養できるため、被子植物に比べ利用しやすい可能性がある。しかし宇宙ステーションのように重力条件の異なる環境下におけるコケ植物の応答については全く明らかになっていない。シロイヌナズナは過重力により花茎のリグニン沈着と2次細胞壁の発達を促進することが報告されている(Tamaoki et al.,2006)。このような形態変化は植物体内の二酸化炭素コンダクタンスに影響し、その結果光合成機能や成長に影響する可能性がある。本研究ではモデル生物ヒメツリガネゴケの過重力に対する成長応答反応の調査を目的に、過重力下10Gで生育したヒメツリガネゴケの光合成解析と形態観察を行った。

過重力により、ヒメツリガネゴケの二酸化炭素コンダクタンスは上昇し、光合成速度が向上するという結果が得られた。そしてシャーレ当たりの乾燥重量は増大した。また形態観察の結果、葉緑体のサイズが大きくなり数が増加していることが確認された。大気に面した葉緑体の表面積と光合成能力には正の相関があると考えられる。これらの結果から、過重力刺激によりヒメツリガネゴケの葉緑体の発達が促進され、大気からの二酸化炭素の取り込みが促進されたと考られた。先行研究では、過重力刺激がシロイヌナズナの花茎の内生オーキシンの増大を引き起こすことが報告されている(Tamaoki et al., 2011)。今研究で得られた形態変化に、これら植物ホルモンが関係している可能性も含めて考察する。


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